大阪のスーパー店員の自分が現状と今後の予測について、書きたいと思います。
お米の担当者ではないですが、担当から見聞きしたことや報道などを中心に関係することをふまえながら つづっていきますね。
売場からお米がなくなった主原因
結論から先に書くと
売場からお米がなくなった主原因は・・・
「買いだめ・買いしめ・買い置きが急増したこと」
にあります。
経緯があります。順に書いていきますね。
目次
- 売場からお米がなくなった経緯
- 全国的にお米不足の原因
- 農家の現状
- 平成の米衝動と数字から見るお米の現状
- 消費者の行動
- 流通の事情
- 今後の見通し
- 今できるお米不足の対策
- まとめ
1.売場からお米がなくなった経緯
いつ頃から、売場から消えたのか・・・
4月頃よりお米の特売が少なくなり、5月くらいから値段が上がり始める。発注数どおりに入荷しなくなったため、お米不足を感じ始めたのは6月頃。それでもまだ売り場から完全に消えるということはありませんでした。
7月に入りお米売り場の棚の一部が空き始め、ブランド米が少なくなった。
8月に入りお米売り場が完全にカラっぽ。しかたないのでパック御飯を陳列。
夏休みに入り子供の給食がないため家庭でのお米の消費量が上がった時期と重なる。
たまに10袋ほど入荷しても秒で売り切れ。発注数を増やしても発注数どおり入荷がありません。
お客様より売場でお問い合わせ、電話でのお問い合わせも8月に入り増えてきました。「現在 発注はできなくて割り当てで数量が決まっていて、入荷日も未定」と説明しております。
8月に入って早場米の新米の入荷があるようになってきました。それでも秒で売り切れしてます。
地方のスーパーに行けば、数は少ないながらも売場にお米が並んでいるという報道してました。
と、いうのが現状です。
2.全国的にお米不足の原因
そもそもお米不足の原因は・・・
昨年(2023年)猛暑と渇水が原因で不作ではないものの、精米した時に品質の悪いお米(白濁したつぶや茶色いつぶ)が増えて歩留まり率が悪化し出荷量が減ったため、と されてます。玄米の歩留まりが悪くなったんですね。
あと、インフレの影響で麺類やパンなどと比べ、お米の価格の値上がり額がまだ小さくお米の需要が伸びたことと、インバウンド需要の増加が言われておりますが、このへんは 4 の項目で少しだけ書いておきます。
3.農家の現状
自分の親の実家が農家で見聞きするのでわかるんですが、農作物としてのお米って全然儲からない。しかも少子高齢化も手伝って、お米の消費量が徐々に減っていき、価格も下がっていってます。政府において過去に減反政策もあり、年々お米の作付面積を減らしたり、生産調整や飼料用のお米に転換していってる状況と聞いてます。
親族の農家は自分たちのお米を食べる分だけ作っていて出荷はしてません。儲からないからです。自分たちにも新米を送ってきてくれるんですけどね。
品物が少なくなってくると「農家や卸売り業者がボロ儲けしているのではないか」というネットでの書き込みを見かけますが、そんなことはありません。農家では収穫後、出荷分についてすぐに出荷しているので在庫は持ってないですし、卸売り業者も通常の在庫は持っているんでしょうが、卸売り業者やわれわれ小売業者も特売をやめただけで価格を意図的に吊り上げしているということもありません。
また、中間業者を通すから値段が上がるのだという論調もあります。農家は農業を勤しむ時間しかなく、販売までは手が回りません。そういうことを言う人は農業の実態を理解してません。実際に農業をしてみればわかると思います。
現在お米は市場価格です。ここ数年では少子高齢化で人口減少と食の多様化でお米が余っていて需要と供給のバランスが崩れ、買い手価格となり かなり安く買えてたと思います。それは農家が儲からない価格だと認識してください。
昨今いろいろな価格が上昇する中、需要が下がったお米は市場価格で決まる低価格なままでした。これでは生産者が儲かるはずがありません。
上記は農作物高騰の際にいつも出てくる論調ですが、国内の食を守ろうとすれば、安く買うことではなく、適正価格で買うことが農業を守ることになり、国民の食も守ることになります。
4.平成の米衝動と数字から見るお米の現状
平成の米騒動と言われる1993年(平成5年)の冷夏では作況指数が74とかなり悪く大凶作で、当時(翌年1994年の春から夏にかけて)は本当にひどかったくらい米騒動になった記憶があります。その時は日本のお米がほぼなく、スーパーで売っていたオーストラリア米やカリフォルニア米を買って食べた記憶があります。そして流通が安定して日本のお米が普通に買えるようになってきたのは やはり10月頃だったと記憶しております。
昨年(2023年)の作況指数は100を超えており不作ではないという数字があります。今回はそこまでひどい状況ではないと数字から読み取れるんですが、なんでそこまでお米がないのか・・・でも多くの国民が要求する高品質のお米(ブランド米)が少ないというのはあるんでしょう。いま出回っている昨年のお米はブランド米(コシヒカリ等)は少なく、ブレンド米が多いです。
また、インバウンド需要と子供の夏休みによる家庭でのお米の消費量が上がったという話もありますが、まったく無関係ではないものの、数字上からすれば微々たるもの、ということらしいです。
報道にあった政府の発表では「お米の在庫は統計が残っている1999年以降で過去最少となっているが、備蓄米を放出しないといけない数字の状況ではない」とのこと。なので放出してないのだとか。備蓄米を放出を気軽にやってしまうと、市場価格に影響が出る(暴落する)ので、そこは慎重になっているんだと思います。
お米の在庫は通常、玄米で置いてます。玄米を精米した時、昨年(2023年)玄米の質が悪いので、歩留まりが悪くなり、玄米の在庫量に対して精米してできあがる白米が少ない、ということがあり、流通する白米の数量がいつもの年よりかなり減った・・・ということのようです。
自分が見た報道では、ある産地のお米で玄米の半分程度しか精米して販売できるお米にならなかったということでした。
5.消費者の行動
お米不足をさらに拍車をかけたのが、8月8日16時43分ごろに発生した日向灘地震と南海トラフ地震臨時情報。運用後、南海トラフ地震臨時情報が初めて出され、その備えとして水もかなり売れていて、一時的に品切れに。その影響もあり、備蓄品としてお米を買いだめしている消費者が多くいたことです。一時期、即席麺も一部商品が品切れを起こしました。そのあたりから売場からお米が完全になくなったのは事実。完全にパニック買いです。
それでも、現状スーパーの店頭に日本人の主食であるお米がないとなると、みんな やきもきしますよね。多くの消費者が買いたい時に買える状況であれば、誰も見向きもしません。どういう状況であれ、実際スーパー店頭にお米が十分に陳列されてないから、余計にやきもきすることでしょう。
コロナ禍においてSNSが発端になり、店頭でトイレットペーパー不足(結局デマ)ではないですが、みんながみんな買いだめして状況がさらに悪化しました。メーカー在庫は潤沢にあるのに、みんながデマに流されてトイレットペーパーを買いだめするもんだから売場より品物が消えて、それを見た人が不安になり買いだめをする。みんながみんな店頭で見かけたら即買いする・・・という悪循環が続き店頭においてトイレットペーパーが品不足となった時と今のお米も同じ状態だと自分は推測します。しばらくすると、みんなに行き渡って売場からトイレットペーパーがなくなることが少なくなっていき、安定供給できるようになってくると、誰も見向きしなくなりました。
潤沢ではないにしろ それなりにお米が倉庫にあるのにもかかわらず、みんながみんな店頭で見かけたら即買いするので、状況は悪化。精米して出荷しても小売店ですぐになくなるため、流通が追いつかなくなり、売場から消える。それを見た人たちが不安になるので、普段からあまり買い置きしない消費者もお米を見かければ即買い・・・という悪循環で売場からお米が消えるという状況になっているものと思われます。
コロナ禍のトイレットペーパーと似たような流通状況になっているのが、今のお米の状況と推測しております。
必要量以上にお米を買いだめしないよう、お願いいたします。これはトイレットペーパーの時と同じ呼びかけです。
パニック買いはやめましょう
案外知らない人が多いですが、現在お米は市場相場価格です。以前に比べ、流通も価格も自由度が高まってます。
スーパーでは多店舗を営業することが多くなっているので、ある程度の商品量を確保できないと、売場に並びません。特に都市部は人口が集中しているため、みんながパニック買いすると、すぐに在庫がつきてしまします。
6.流通の事情
毎年お盆前後は流通が止まり納品もなくなります。お米は例年だと販売が急増することがないため、お盆前にあらかじめ予測して発注数量を少し多めにして在庫として置いてある程度。そんな時期にみんながみんなパニック買いされたら、そりゃお米が店頭から消えるわなって言う話です。
現在、卸業者は精米して流通が滞らないよう、がんばってくれているとは思いますが、それでもあちこちからの発注数が増えて、間に合ってないと思います。何度も書きますが、このへんはコロナ禍のトイレットペーパーと同じです。
あと、一部の卸業者は個人消費者向けのお米を出荷制限かけていると思います。理由は在庫が例年より少ないから。
業務用のお米は年間契約していることが多く、卸業者が確保してあることも多いので、本当にお米の量が不足した時以外は発注すれば通常の数量分は入荷している状況です。
業務用(ウチは主に惣菜用)のお米は発注すれば数量通り入荷してきます。これはほぼ一定の発注数なので、卸業者側も確保してくれているのではないかと。
個人の消費者向けのお米は今回のように状況によって大きく変動することもあり、後回しになることも多いです。
それなら緊急事態なんやから業務用のお米を売れや!っていう話もありますが、小売りに必要な表示がされてないので小売りできません。緊急時だからエエやんっていうことにはならなくて法律上、そうなってないのだからできません。コンプライアンス厳守です。
7.今後の見通し
今後は夏休みも終わって学校も始まり、家庭での需要も減っていき、さらに9月になれば新米が出てくるので、お米不足も徐々に解消されるものと思われます。
卸業者より、なんとか回していけるようになるのは新米が出回ってくる9月に入ってから。安定供給できるようになるのは米どころである東北と北海道の新米が出てくる10月頃と予測している、とのことです。
そもそもこの時期(8月)は前年のお米の在庫が少ない時期に当たり、いつもの年であればこの時期、早場米の新米と古米が流通しており、古米が特売になってたりするので、価格も安く手に入ったりしてました。もともとスーパーで販売しているお米は低価格のものが多い。
しかし古米が少ない状況なので、今後しばらくは新米の価格が高止まりするものと思われます。消費者の購買意欲が高いままだと、卸業者側も引き合いが強くなる状況にあり、小売店側の仕入れ価格も下がらないので、われわれスーパー業界としてもわざわざ値下げしません。そこは需給バランス。
現在、高止まりしているお米の価格はそれまでの格安価格から通常価格に戻っただけとお考えください。
小売店の要望から新米を前倒しして出荷しているというニュースも見かけました。
ニュース記事「「スーパーに米がない」SNSで“米騒動”心配する声も… 農水省「93年とは状況違う」冷静な対応を呼びかけるワケ」
今年(2024年)稲の生育状態は「比較的良好」という報道です。
買いだめをすると新米が出回っているにもかかわらず、前年の古米を食べなければいけなくなる状況になるので、買いだめは得策ではありません。
お米を使った加工品の値上げもあるかもしれません。米菓のおせんべい、日本酒などです。
8.今できるお米不足の対策
自分は健康のために、こういう状況になる前から休みの日はオートミールを米化して食べてます。
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お米に他の雑穀を入れて かさ増しするとか、麺類や他の穀物の回数や量を増やして対応していき、この時期を乗り越えていきましょう!
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それと、個人経営しているようなお米専門店などには在庫が少ないながらにも、まだお米があるお店もあると聞いてます。そういうお店に行ってみるのもいいかもしれません。ただし購入制限がかかっていることもあるようです。多くの国民が気軽に利用するスーパーはお米専門店よりも客数が圧倒的に多く、ある程度の数量がないと売場へ十分な量が陳列されませんので。
9.まとめ
結局のところ、今回のお米不足の主原因は世間のパニック買いによるものだということになろうかと思います。都市部では精米と配送が間に合わず、品切れ品薄を起こしている、ということです。
9月中頃より新米の出荷が加速していくとのことなので、もう少しだけの辛抱です。
令和の米騒動と言われる今ですが、少しでも参考になればと思います。